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鎖引き装置(Fusse)

主ゼンマイトルクを安定させる定力装置(コンスタントフォース)の一種で均力車とも言われる。

解けても安定するトルクを実現

かつて用いられていた主ゼンマイの力を輪列に伝える際の機構。
ゼンマイを最大に巻き上げた時と解け終わり頃の駆動力を均一化する機構。
以前に主流だった厚手の鋼のゼンマイでは一杯に巻き上げた時と解け終わりのトルクの違いが大きく、そのまま歯車に力を伝達すると時計の精度にバラつきが生じてしまう。
それを解消する為にゼンマイの入った香箱からの力を伝える際、螺旋状に溝の掘られた円錐型の歯車(fuseeフュージー)に巻き付けられた極細の鎖を中継してゼンマイの駆動力を伝える。
巻き上げた際には鎖の位置はフュージー上方の細い所にある為、強すぎるゼンマイの力を減衰し、ゼンマイが解けてトルクが落ちてきた頃には鎖はフュージーの根本近くの太いところにあるのでゼンマイのトルクが落ちていても弱い力で輪列やテンプを動かす事ができる。
但し製造にあたっては現在主流の香箱駆動方式の時計に比べて部品点数が多く、ゼンマイ交換をする際にはその都度の調整が必要となってしまう。
又、フュージーの入った時計はその構造上、時計に厚みがでてしまうため20世紀に入る頃には一部のイギリス時計と高性能が求められる船舶用のマリンクロノメーター以外にはほぼ使われなくなった。
しかしかつては高性能携帯時計の一つのステータスであったフュージーはその構造の複雑さが却って現代の機械式時計では魅力の一つとなっている。
近年腕時計に搭載されたものとしてはランゲ&ゾーネのプール・ル・メリットが有名。

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