Orient(オリエント)スリーエースcal.1942の分解掃除と修理
繋がりを大切にするオリエント
1920年に前身となる会社を創業し1951年にオリエント株式会社の商号になり、同年に”輝ける星”をイメージした機械式腕時計「オリエントスター」を発表、
現在も新作をリリースし続けています。2022年7月5日には「ダイバー1964 2nd エディション」として本格ダイバーズウォッチのリリースを予定しています。
2017年にはエプソンに統合されより最新技術を取り入れた時計制作は2021年にリリースされた70周年記念スケルトンモデルに搭載され、
パワーリザーブを70時間まで延長させ、その美しさは見る人を魅了するムーブメントの「シリコン製ガンギ車」に象徴されています。
エプソンと聞くとプリンターのイメージが先行しがちですが、その根底にあるのはモノづくりで時計はムーブメントの製造もおこなっています。
2022年6月現在のエプソンHPを見るとそこに掲載されているキャッチコピーは「つながりが、これからを変えていく。」、オリエントともこれからを変える繋がりであるようですね。
オリエントは3つのよろこび「着ける悦び」「魅せる喜び」「繋ぐ慶び」を礎として時計づくりを追求してると言います。
時計が好きな人なら大いに共感できるモットーで安心と信頼をおけるような職人が作っている、そう感じさせてくれます。
込められた意味は“切り札”のスリーエース
今回ご依頼いただいたオリエントの時計のペットネーム「AAA(スリーエース)」には『品質』『デザイン』『価格』の切り札と言う意味合いが込められています。
オリエントは向かい合った獅子のロゴマークがカッコよくて印象に残りやすく有名です。前述したオリエントスターはオリエントのブランドでSを象徴したロゴマークになっています。
この相対の獅子が登場したのが1965年のことと言われていて、1960年代は国産時計躍進の時代と呼ばれるほど見た目も機能も様々な時計が登場し、
自動巻きの防水時計や18000振動から36000振動のハイビートのムーブメントが作られ、東京オリンピックではセイコーがオフィシャルタイムキーパーを担当しました。
魅力的な見た目の時計も数多く登場していた中でもより印象に残りやすく、そんな意図も込められていたのかもしれない1965年以降の獅子のロゴマーク。
そして内部機構は1965年に製造され始めた自動巻きのムーブメントCal.1942が搭載されています。
あらためて今回お預かりしたスリーエースのフェイスを見てみると盤面上に獅子のロゴがありません。
こちらのオリエントは1965年内のごく僅かな期間しか製造されていない獅子ロゴの無いスリーエース、大変レアな時計であることが分かります。
スリーエースの修理内容
オーナー様よりお持ち込み頂いた段階では動いてはいるものの大幅な遅れや針のズレがおきていて使用の困難な状態でした。
しかしとあるきっかけで機械式時計の構造に興味を抱いたオーナー様、折角だからご自宅で眠らせておくよりもメンテナンスして稼働させたいと今回お持ちいただきました。
パーツひとつひとつ劣化や損傷が無いか確認するのでオーバーホールを行い交換の必要な部品が無いかチェックを行い分解・洗浄を行います。
今回そのオーバーホール中に「ゼンマイ交換」と「日の裏車(時針を12時間かけてゆっくり動かすための歯車)修理」を行う必要が発覚しました。
修理必要箇所が発覚した段階でオーナー様に確認連絡をして是非修理したいとの回答を頂いたので、全力でパーツ手配から交換・修理を行います。
オーバーホールと併せてご依頼いただいていたケースのポリッシュも行い、スレ跡やコキズを磨くことで払拭して仕上げていきます。
最後にオーナー様にお選びいただいた新品のベルトに交換して完成です。
先日、仕上がったオリエントのスリーエースをオーナー様へお渡ししましたが綺麗に稼働するようになった様子に感動されていました。
実はオーナー様は建築関係のお仕事をされているとのことでしたので、3つの「よろこび」を届けたいというオリエントのものづくりへの意識に共感されたのかもしれません。
着ける悦び、魅せる喜び、繋ぐ慶び、これらはよりよいものを作りたいと想いを込めて造られた時計全てに似たような魂がこもっていると感じます。
皆様も時計を通じて人や次の世代・未来への繋がりを感じてみませんか?
ご自宅に眠らせている時計、いつも着けている頼れる相棒のような時計、まだ手元にお持ちでない人も。
私たちなら修理やメンテナンス、そして購入のご相談まで時計の事ならどのようなことでも歓迎しています。
是非お気軽に気になっていることをお問合せ下さい。お待ちしています。