エボーシュ
未完成のムーブメントのこと。
スイス時計業界の分業制
スイスは17世紀頃から時計のムーブメントを”分業制”で製造してきました。
ムーブメントはムーブメント製造メーカーが作り、組み上げは組み上げを専門とするメーカーが行います。
そして、この流れは現代においても受け継がれています。
例えばムーブメント製造メーカーとして世界的に有名であるETA社。ETA社はエボーシュと呼ばれる未完成のムーブメントを各ブランドに提供しています。
提供を受けた時計メーカーはそれを基に独自にアレンジして完成させます。
こういった分業制から世界最大の時計生産国となりました。
しかし、クオーツ時計の誕生により時計業界は大きな改変を迎える事となり、数多くの老舗ブランドがグループ傘下に下ります。そして、ETA社もスウォッチグループに買収されてしまいます。
激震!ETA社ムーブメント供給停止問題!
ETA社を傘下に収めるスウォッチグループは、2002年にグループ外へのETAエボーシュ提供を段階的に停止していくと発表。
「何故他社に自グループの技術を提供しなければならないのか?」ということが発端なのですが、これによりスウォッチグループ以外の時計ブランドは再び窮地に追い込まれることになります。
リシュモン・LVMH傘下の時計ブランドに限らず、ほぼ全てのスイスブランドはこれまでETA製ムーブメントに依存して時計作りを行ってきたのですから、いきなり供給をやめるといわれても対応することはできません。
結果的にこの発言がキッカケとなり、スイスの時計業界は一気に対立構造へと向かいます。
ただ、独占禁止法やスイス時計産業全体の様々な問題があり、最終的には2020年にETA社のムーブメントの供給停止が決定しました。
つまり、2020年以降はスウォッチグループ傘下以外の時計ブランドはETAムーブメントを使用することができません。
スウォッチグループ以外の時計ブランドは、頼みのエボーシュが手に入らなくなるので、マニュファクチュールかETA社以外のエボーシュを採用するか迫られ現在も格闘中。。
ETA社CAL.2892ベースのムーブメント