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早すぎた発明「耐磁ケース」【ブローチ(BROOCH)時計修理工房 神田店】

5月 5th, 2022

早すぎた発明「耐磁ケース」  

部品のほとんどが金属製の機械式時計は、磁力が大敵です!特にヒゲゼンマイをはじめ脱進機の部品が磁気を帯びてしまうと精度が下がり、場合によっては動かなくなってしまいます。昔の人が「腕時計はテレビの上に置いてはいけないよ」と言っていたらしいですが、それはスピーカーの磁石や電磁波が時計を帯磁させるからです。当時はほとんどの時計屋さんに、磁気を抜く「消磁器」が置いてありました。この問題を解決すべく生まれたのが、軟鉄などの防磁素材で作られたインナーを持つ「耐磁ケース」です!! IWCが1955年発売の”インヂュニア”で採用。フランス語で技術者を意味する名の通り、モーターなどが発する強い磁界に囲まれた環境を想定し、当時としては画期的な8万A/mの磁場(磁束密度でいえば1005ガウス)に耐える仕様。翌56年には、ロレックスが同様の耐磁ケースに入ったその名も”ミルガウス”を発表しました。ところが、当時の一般的な日常生活ではそこまでの耐磁性能は求められなかったせいか、金属製のインナーがある分だけ重く大きく、外から見ても効果がわからない耐磁ケースは爆発的な人気とはならず、クオーツ式の台頭もあってミルガウスは87年に一旦、生産中止になってしまいます。インヂュニアも耐磁ケースを使わないモデルが作られるようになっていきます。現代でしたらスマホやPC,電化製品など普及しているのでもはや必ず必要なスペックと言っても良いですが、先取しすぎちゃったんですね。このようなケースってどこの世界、業界にもありますもんね。そして90年代に機械式の人気が復活し、IT化が進んで電磁波が飛び交う時代になると、腕時計の耐磁性能が再び見直され、2007年にはミルガウスが生産再開します。しかしこの頃になると今度は帯磁しにくい新素材が登場し、必ずしも耐磁ケースに頼る必要はなくなりました。オメガは 2013年に発表した“シーマスター アクアテラ”で耐磁ケースを使わず1万5000ガウスの耐磁性能を実現。今では同社の多くのモデルが同様の性能を誇っています。ちなみに1000ガウス=8万A/mです。
ノートPCのスピーカーが最大8000A/m
iPhoneのスピーカーが最大1万A/m
家具のドア・マグネットが6万4000A/m
磁気健康枕が最大4万8000A/m
電気カミソリが最大1万400A/m
磁気ネックレスが最大9万6000A/m
ネックレスがやはり高いですが、1,000ガウスあればとりあえずは安心できそうですね。1万5000ガウスもあればほとんど怖いもの知らずといった感じですね!(笑)
消磁器の画像、斜め
磁気帯び修理事例
それでももし磁気を帯びてしまったら、この消磁器を使って磁気を取ることが出来ますのでご安心ください。
神田店の外観
上記で紹介の磁気抜き以外にも腕時計のメンテナンス、修理はぜひブローチ時計修理神田店におかませください。電池交換】や【オーバーホール】、【研磨(ポリッシュ)】【ベルト交換】など、腕時計修理全般を承っております。他店で断られた腕時計もお気軽にご相談ください。

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