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アジャスト(Adjust)

時計における調整の事。今回は機械式時計を例にお伝えいたします。
時計の中には文字盤に対して水平にいくつもの歯車やパーツが取り付けられています。
この中でもっと精度に影響が出やすいのがテンプを呼ばれる部品です。
この部品も通常歯車と並行(一部のトゥールビヨン等の機構を搭載した時計は別とします)に内部に組み込まれていますが、ざっくり申し上げるとこのテンプという部品、糸を引いて回して遊ぶコマと似た様な構造と動きをしています。
平たい円盤の中心に軸を貫通させた形をしており、軸の上下の先端がそれぞれ穴石と言うベアリングの役目をする部品の穴の中を通って、受石という部品の表面が研磨された面に先端が乗って回転しています。
このアジャスト、即ち調整という意味ですが、古い時計では5ADJUSTED等の文字がムーブメントに刻印されたものがあります。
これは色々な姿勢での位置を調整し、各姿勢での精度が均等になる様に調整を施しているという意味で主に各メーカーの上級グレード以上の時計に主にみられます。

Adjustedの刻印のあるウォルサム
話を戻しまして、なぜこのアジャストが必要なのかというと、先ほどお話したテンプの軸ですが、時計を垂直に持ち上げると、内部ではテンプは横倒しの状態で動く事になります。
その際軸の先端(ホゾ)は受石の研磨面ではなく、穴石の壁面を支店に動作する為に摩擦が発生します。この摩擦により本来テンプの運動エネルギーが削られます。するとテンプの振り角が落ちる事により、精度が進んだり、場合によっては遅れたりします。
反対に文字盤を表や裏にして時計を動かしている時には軸は先端の最も細い部分が接触し、摩擦の抵抗が最小となります。
その結果と時計の位置によって遅れ進みの誤差(姿勢差)が発生してしまいます。
この姿勢差は完全にゼロにすることはできませんが、その差を限りなく小さいものにする為に製作者やメーカーはテンプの重量バランスを整えるといった作業をします。
この様な緻密な作業を総合してアジャストと言います。
今回は姿勢差のみにおいてお話しましたが、他にも温度変化による時計の誤差を含み調整する事もあります。

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