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OMEGA

OMEGAの時計と言えば絶対に名前が挙がる人気モデルSEAMASTERとSPEEDMASTER。今回はSPEEDMASTERについて解説していこうかと思います。ご存じの方も多いと思いますがSPEEDMASTERはNASA公式装備品として認定されている時計です。しかし元々モータースポーツ系統に使用される予定で作られた時計です。

ではなぜモータースポーツからNASA公式時計になったのかご説明いたします。

当時NASAでは宇宙でも使用できる時計を探していました。1965年に宇宙計画に伴って名だたるメーカーに時計開発の依頼を出し11個の耐久テストを行いました。その中にOMEGA SPEEDMASTER (Ref.105.003)がエントリーされていました。

  • ①高温環境下テスト

検査装置内の温度を70℃に設定し時計を48時間放置する。装置内の気圧はほぼ真空状態に保たれる。
装置内の温度を室温に戻し時計の動作チェック。
さらに内部を93℃まで上げそこから30分時計を放置し再度動作チェック。

  • ②低温環境下テスト

検査装置内に時計を入れて内部の温度を-18℃に設定し4時間放置。
装置内の温度を室温に戻し時計の動作チェック。
装置内の気圧はほぼ真空状態にして相対湿度は-15%以下に保つ。

  • ③気温と気圧テスト

時計を装置内にセットし内部を真空状態に設定。
内部の温度を70℃から-18℃に下げ時計を45分放置。
再び内部の温度を70℃に上げ45分放置。
このセットを1セットとし計15セット繰り返す。
その後装置内を室温に戻し時計動作チェック。

  • ④相対湿度テスト

20℃~38℃の蒸気が吹き抜ける検査装置内に蒸気を入れながら
2時間かけて温度を70℃に上げ時計を6時間放置。
装置内の相対温度は95%以上に保つ。
その後16時間をかけて温度を元に戻し時計の動作チェックを行う。

  • ⑤酸素雰囲気中テスト

室内を酸素100%で0.35気圧、気温70℃に設定し時計を放置。
その間明らかな燃焼や有毒ガスまたは不快な臭いの発生
しいては結合部分や潤滑油の劣化が見られた場合その時計は不合格。

  • ⑥衝撃テスト

時計を検査装置に入れ着陸時の衝撃を想定し時計に40Gの負荷
(時速200kmでコンクリートにぶつかったのと同じレベルの衝撃)
を1000分の11秒繰り返し、垂直・側面・並行など6姿勢ごと1回ずつ行いその後動作チェック。

  • ⑦加速度テスト

時計を検査装置内に入れて333秒間の間に重力が1Gから7.5Gになるまで加速する。
さらに重力が16Gになるまでさらに加速。
これを3方向から1回ずつ行い動作チェック。

  • ⑧減圧テスト

検査装置内を0.35気圧(エベレスト山頂と同じくらいの気圧)
に設定し温度を70℃に上げ時計を1時間30分放置する。
その後装置内の温度を93℃まで上げて時計を30分放置すし計2時間後動作チェック。

  • ⑨高圧テスト

検査装置内を1.6気圧に設定し時計を最低1時間以上放置する。
高圧環境により時計に不具合や破損個所が出ていないかを入念にチェックし最後に動作チェック

  • ⑩振動テスト

時計を検査装置内に固定し5~2000HZまでの間で振動数を変更しながら30分間振動を与える。
この内容で時計を垂直・側面・並行など、6姿勢ごとに1回ずつ検査を行い動作チェック。

  • ⑪可聴音ノイズテスト

検査装置内に時計を入れ40~1000HZの振動数の幅で30デシベルのノイズを当てていく。
これを垂直、側面、並行の計6姿勢ごとに10分ずつ行う。
検査終了後動作チェック。

これら11個の過酷なテストの結果、ある時計はクリスタルが砕け飛び、またある時計は針が止まったまま微動だにしなくなりました。重力、衝撃、振動、真空状態での急激な温度変化などのテストに耐え抜きそこで見事に合格したのがOMEGA SPEEDMASTERだったのです。  

OMEGAsm_3

それから4年後1969年アポロ11号の宇宙飛行士に支給されたのが 更に機能性を高めた手巻き式の機械時計 OMEGA SPEEDMASTER PROFESSIONAL(Ref.105.012)

  • アポロ11号の月面着陸の後この時計はムーンウォッチの別名で呼ばれる歴史的な時計になりました。2024年現在までに様々なOMEGA SPEEDMASTERが作られて第8世代まで作られ続けているほど人気ですが、やはり1番人気なのは月面着陸成功時に宇宙飛行士たちに使われていたという宇宙へのロマンが詰まった
  • 第4世代 OMEGA SPEEDMASTER(Ref.105.012)OMEGA SPEEDMASTER (Ref.145.012)ではないでしょうか。

 

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