BROOCHブローチ時計・宝石修理工房 > ブログ > 万代シティ店 > 深海で選ばれた色その理由 ― オレンジベゼルに込められた機能と時代背景OMEGAシーマスター プラネットオーシャン オレンジベゼル Ref.2209.50
スタッフブログ

積み重なる時間の中で出会う一本|#2

 

時間に色を宿す一本 ― 深海の記憶とあの時代だけのオレンジ

 

プラネットオーシャンが誕生した2000年代前半――それは、ダイバーズウォッチが「道具」から「語る存在」へと変わり始めた転換期でした。

それまでのダイバーズは、極限環境での信頼性や堅牢性が何よりも優先され、デザインはその延長線上にあるものに過ぎなかった。しかしこの時代、男たちは時計に“機能以上の何か”を求め始めます。海を知らなくてもいい、だが海を感じたい。そんな欲求に応えるかのように、時計は静かに進化していきました。その流れの中で選ばれたのが、「オレンジ」という色です。

一見すると大胆で、どこか遊び心すら感じさせるこの選択。

しかし、その裏には明確な理由と積み重ねられた知見があります。水中という特殊な環境では、光は深度とともに吸収され、色は次第にその存在感を失っていきます。特に赤系の色は早い段階で黒に近づき、視認性を著しく落とす。

一方で、特定の水深や光条件においては、オレンジは他の色よりも輪郭として認識しやすく、瞬時の判断を求められる場面で優位に働くことがあるのです。

つまりこの色は、「目立つから採用された」のではない。「見えるべき瞬間に、確実に見えるため」に選ばれた色なのです。

 

さらに興味深いのは、この機能性が単なるスペックとしてではなく、デザインへと昇華されている点にあります。無機質なツールに終わらせず、身に着ける喜びや所有する満足感へと繋げる。そのバランス感覚こそが、この時計を語る上で欠かせない魅力です。スーツの袖口から覗くその一瞬、あるいは休日のラフなスタイルに合わせたとき、そのオレンジは確かに個性を主張する。それでいて決して浮かない。計算され尽くした“ちょうどいい異物感”が、男の感性をくすぐるのです。

特に初期のプラネットオーシャンに目を向けると、その魅力はさらに深みを増します。現行モデルでは当たり前となったセラミックベゼルがまだ主流ではなかった時代、採用されていた素材はアルミニウム。そのため発色はどこか柔らかく、光の当たり方によってわずかに表情を変える、揺らぎのあるトーンを持っています。鮮烈でありながら、どこか温かみを感じるその色味は、量産品でありながら個体差という“味”を感じさせる稀有な存在です。

この「完全ではない美しさ」に惹かれるのは、経験を重ねてきた男たちならではかもしれません。均一で整いすぎたものではなく、時間とともに変化し、微妙な違いを楽しめるもの。その価値を知っているからこそ、初期モデルのオレンジには特別な意味が宿るのです。

スペック表を眺めるだけでは見えてこない、時代背景と設計思想。そして、その裏にある開発者たちの意思。なぜこの色だったのか、なぜこの質感だったのか――そうした“理由”に触れたとき、この時計はただの所有物から、語りかけてくる存在へと変わります。

現在、BROOCH時計修理工房万代店にて販売中でございます。
ぜひ店頭でその魅力をお確かめいただけましたら幸いです。皆様のご来店を心よりお待ちしております。

OMEGA シーマスター プラネットオーシャン オレンジベゼル Ref.2209.50 550,000円(税込価格)

 

  • BROOCH時計修理工房万代店

 

作成者SI

閉じる