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切りテンプ

19世紀後半の懐中時計に見られた自己補正型テンプのこと

テンワに切れ目が入っていて、温度の変化による変形を補正します。調整が難しかったこともあり、エリンバー合金の普及後は、ほとんど見られなくなりました。

かつては、鋼製のヒゲゼンマイが使われているロンジンの古い懐中時計などに搭載されていました。このテンプはテン輪に真鍮と鋼など、熱膨張率の異なる2種類の金属を貼り合わせてあり、かつテン輪の一部が切れています。温度が上昇するとテン輪が小さくなる(慣性モーメントが小さくなる)仕組みになっており、ヒゲゼンマイの熱膨張や弾性低下による精度の遅れを相殺することが出来ます。温度が低下した場合は逆にテン輪が大きくなり、ヒゲゼンマイの進みの特性を補正できます。さらにテン輪に付けられたチラネジを調整することで、温度補正の強弱を調整することができます。現代の機械式時計では、ヒゲゼンマイ自体に温度補正の特性がある金属が使われているため、超高級時計以外では使用されることはほとんどありません。バイメタルテンプと呼ばれることもあります。

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