クォーツ式でも機械式でもない「第三の時計」
こんにちは。BROOCH時計修理工房神田店です。今回は、クォーツでも機械式でもない第三の時計「音叉時計」についてご紹介いたします。まず初めに音叉とは、U字形の鋼棒の中央突端に柄を付けたものです。叩くと音を出し、一般的には振動数の実験や、楽器の音合わせなどに使用されてきました。今回は、その音叉時計の仕組みや歴史についてご紹介いたします。
音叉時計の仕組み
音叉時計は、機械式時計にみられるゼンマイやテンプの代わりに、音叉・水銀電池・電磁コイル・電磁コイル・トランジスタ回路で駆動します。時計内部のコイルに電圧をかけ、音叉から発生する正確な共鳴信号(360振動/1秒)によって、インデックス車を回転させ、振動する仕組みになっています。常に音叉が振動しているため、耳を近づけると独特な作動音が鳴っていることが分かる点も、音叉時計ならではの特徴です
音叉時計の歴史
世界初の音叉時計が発表されたのは、1960年のことです。スイスのヌーシャル時計研究所のマックス・ヘンシェル博士によって発明されました。音叉時計は、従来の機械式時計や電磁テンプ時計よりもはるかに高精度で、日差±2秒という正確さを誇りましたが、より高周波で、安定性に優れたクォーツ時計が現れるまでのわずか数年という短命に終わりました。音叉時計の第一号は、「ブローバのアキュトロン」でしたが、日本製のクォーツ時計を前に敗れ去り、1976年にアキュトロンの製造を中止することになりました。ブローバ社以外にもOMEGA、IWC、シチズン、テクノス等らが音叉時計の製造を行っておりました。現在ではヴィンテージウォッチとして愛されています。万人向けの腕時計というよりは、時計の専門家や時計に詳しい方、コアな音叉時計ファンがこだわりを持って入手しているようです。特に時計の専門家にとって、数ある音叉時計の中でもアキュトロンは特別な存在になっています。